溶接工とは?必要な資格や収入面、未経験から目指す方法を紹介!
2023/12/15 更新
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■目次
- 1.押さえておきたい溶接の基礎知識
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・そもそも溶接とは?
・溶接の種類について
・溶接工の仕事について
- 2.溶接工が求められる現場・勤務先
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・一般機械の製造工場
・ビルや橋梁などの建設現場
- 3.溶接工の収入面について
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・溶接工の平均的な給与額は?
- 4.溶接工に必要な資格
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・溶接の国家資格「アーク溶接作業者」「ガス溶接作業者」
・溶接の民間資格「溶接技能者」
・溶接の民間資格「溶接管理技術者」 - 5.溶接工に向いている人・向いていない人の特徴
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・溶接工に向いている人は?
・溶接工に向いていない人は? - 6.未経験から溶接工を目指す方法
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・学校で専門知識を身に付ける
・資格を取得する
・OJTのある会社の求人に応募する - 7.まとめ
- 8.溶接のお仕事を探している方はコチラ!
1.押さえておきたい溶接の基礎知
そもそも溶接とは?
「溶接とは、さまざまな部材を加熱・加圧することで、ひとつの部材に接合する加工技術です。また、加熱・加圧による接合だけでなく、溶加材(溶かして使用する接着素材)を使って接合する方法も溶接に含まれます。
モノづくりに欠かせない溶接の歴史は古く、すでに紀元前3000年頃には、メソポタミア地方で金属の接合に溶接技術が用いられていたことが確認されています。その後、溶接技術は19世紀の産業革命を経て大きく進展・普及し、現代においても自動車や建築資材、電子部品、家具、貴金属、時計など、さまざまな製品の加工に不可欠な技術として広く利用されているのです。
溶接の種類について
溶接の方法には大きく分けて、「融接」「圧接」「ろう接」の3種類があり、接合する部材の特性や目的によって使い分けられています。以下、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
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《融接》
溶接の中で最も広く使われる基本的な方法で、部材の接合部に電気や火で熱を加えて溶かし、冷やし固めることで接合加工します。接合箇所を冷やし固めると強固に結びつくため、強度を求められる部材を加工する際に多く用いられます。融接の主な方法としては、「アーク溶接」「ガス溶接」「レーザー溶接」などがあります。●アーク溶接……アークと呼ばれる超高温の放電現象を利用して接合する方法。主にビル建築や造船の際に使われる部品の加工に用いられます。
●ガス溶接……ガスバーナーの熱で部材を溶かして接合する方法。用途が広く、薄い部材の加工にも対応できます。
●レーザー溶接……レーザーで部材を溶かして接合する方法。主に精密機器に使用する部材の加工に用いられます。
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《圧接》
圧接とは部材を電気や摩擦で加熱し、プレス機などの機械で圧力を加えて接合する方法で、金属製の硬い部材や薄板を接合する際に用いられます。圧接の主な方法としては、「抵抗溶接」「ガス圧接」「摩擦圧接」などがあります。●抵抗圧接……部材に電流を流し、電気抵抗によるジュール熱を発生させて接合する方法。主に薄板の接合などに用いられます。
●ガス圧接……部材同士を押し付け、接合面をガスで加熱して接合する方法。主に鉄骨の接合に用いられます。
●摩擦圧接……部材同士をすり合わせて摩擦熱を発生させ、圧力をかけて接合する方法。主に異なる種類の金属を加工する際に用いられます。
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《ろう接》
部材そのものを溶かさずに、部材より低温で溶ける溶加材を用いて部材を接合する方法で、主に「ろう付け」と「半田付け」の方法があります。●ろう付け……溶融温度が450℃以上の溶加材で部材を接合する方法。異なる種類の金属の接合や、気密性・耐熱性を求められる自動車部品などの接合に用いられます。
●半田付け……溶融温度が450℃以下の伝導性溶加材で部材を接合する方法。電子部品の接合・加工などに用いられます。
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溶接工の仕事について
このように一口に溶接といっても、扱う製品や部材、現場によって溶接の方法が異なることから、溶接工の仕事も溶接の種類ごとに細分化・専門化されているのが一般的です。そのため、溶接工は担当する溶接の専門知識とともに、用いる部材や機器を安全・適切に扱って接合加工する技術が求められます。
また、超高温の部材やガスなど扱う溶接の現場では、危険を伴う作業が多くあるため、作業に携わる溶接工には、基本的に専門の資格が必要とされています(溶接工に必要な資格については、後章で詳しく解説します)。
2.溶接工が求められる現場・勤務先
溶接にはさまざまな種類があるため、溶接工の活躍の場も多岐にわたりますが、とくに溶接工が求められる勤務場所は以下の2ヵ所です。
一般機械の製造工場
自動車や重電機をはじめとする一般機械の製造には、溶接加工の技術が必須となります。これらの分野の製品は、基本的に工場内で各部品の溶接を行い、そのあとに組み立てて完成させるのが一般的です。たとえば自動車製造の場合、車のボディやシャーシなどの各部材を溶接した後、それらを組み立てて自動車の形に仕上げていきます。基本的に部品やパーツごとに溶接するため、扱う部材のサイズはさほど大きくありません。
ビルや橋梁などの建設現場
ビルや橋梁などの建設現場も、溶接工の主な勤務場所となります。建設現場の溶接は狭い足場や高所で作業することが多く、扱う部材(建材)のサイズも大きくなるため、一般機械の溶接と比べると高度な作業スキルが必要となります。また、工場内で使われるようなプレス機による圧接はほとんど行われず、融接とろう接がメインとなるのも特徴です。
3.溶接工の収入面について
溶接工の平均的な給与額は?
溶接工は専門性の高い技術職であることから、一般的な事務職などと比較すると、給料はやや高めの水準となっています。
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、溶接工の月額給与の平均は31万8000円、年間あたりの特別給与(賞与など)の平均額は75万5000万円となっています。
溶接工の平均年収は?
上記の給与額から溶接工の平均年収を算出すると、31万5000円(月額)×12ヵ月+75万5000円(賞与など)=453万5000円となります。
日本国内における全労働者の平均年収(約443円)と比較すると、ほぼ同等~やや高めの水準といえるでしょう。
※参考資料/厚生労働省賃金構造基本統計調査(令和4年) 賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
4.溶接工に必要な資格
溶接の資格は、数や種類が非常に多いのが特徴です。溶接工として働くために必須といえるものから、キャリアアップや管理職向けの上級資格まで幅広くあります。
ここでは、取得しておきたい初級者向けの国家資格と、おすすめの民間資格を紹介しましょう。
溶接の国家資格「アーク溶接作業者」「ガス溶接作業者」
「アーク溶接作業者」「ガス溶接作業者」とは、アーク溶接・ガス溶接を行う上で必要な国家資格です。アーク溶接に携わる者は「アーク溶接等の業務に係る特別教育」、ガス溶接に携わる者は「ガス溶接技能講習」の取得(修了)が義務づけられています。
いずれも18歳以上であれば誰でも受講でき、所定時間の学科・実技の講習を受講すれば取得可能です。講習は各都道府県の労働局長登録教習機関、指定の事業者などで実施しています。
溶接の民間資格「溶接技能者」
溶接に関する民間資格としては、日本溶接協会がJIS・WESの検定試験規格に基づいて実施している「溶接技能者」があります。資格には基本級と専門級の2つのレベルが設定され、さらに「手溶接(アーク溶接)技能者」「チタン溶接技能者」「ステンレス鋼溶接技能者」など、溶接方法や部材によって資格が細分化されています。どの種別の資格も、まずは基本級を受け、経験を積みながら専門級の取得を目指す人が多いようです。
溶接の民間資格「溶接管理技術者」
同じく、日本溶接協会による「溶接管理技術者」の資格は、溶接技能者より上位レベルの資格で、溶接技術に加えて、作業現場での管理能力も求められます。したがって、溶接管理技術者の資格を取得すると、工場や施工現場で溶接作業を行うだけでなく、その作業現場の管理・監督・計画・実行も任せられる立場になります。
以上、溶接技能者と溶接管理技術者の資格は、日本溶接協会が実施する試験に合格することで取得できます。いずれの資格も、溶接の仕事をする上で必須となるわけではありませんが、取得することで溶接の技量を証明でき、就職・転職の際にも有利となるでしょう。
※溶接技能者・溶接管理技術者の資格取得に関する詳しい情報は、下記の「一般社団法人 日本溶接協会HP」をご覧ください。
日本溶接協会(JWES)
溶接資格の種類と難易度を解説!取り方や費用についてもまとめて紹介
5.溶接工に向いている人・向いていない人の特徴
どんな職種にも向き・不向きはありますが、とくに溶接工は仕事の適性が問われやすい職種です。溶接工の仕事が自分に向いているのか・向いていないのか、以下の点を参考に検討してみましょう。
溶接工に向いている人は?
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《注意力・集中力がある》
溶接工程では電気やガス、プレス機などを使用し、火花が出る危険な作業も多いため、安全かつ正確に作業を進める注意力・集中力が求められます。
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《体力に自信がある》
溶接作業では重い部材などを扱うことが多く、立ったまま無理な姿勢で作業することも少なくありません。よって、長時間の立ち仕事やハードな力仕事に耐えられる一定以上の体力が求められます。
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《モノづくりが好き》
溶接の工程ではさまざまな部材を溶接して製品を加工していくため、自分の手で具体的な形を作り出すことが好きな人は、仕事への熱意とやりがいを持ってスキルアップに励めるでしょう。
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溶接工に向いていない人は?
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《集中力や根気が続かない》
溶接はひとつの工程を繰り返す単純作業が多く、コツコツと同じ作業を続けながら技術を習熟していくため、粘り強く作業に取り組む根気や集中力が続かない人は、仕事に飽きてしまう可能性があります。
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《注意力が散漫・気が散りやすい》
安全に注意しながら精度の高い加工を行う溶接工は、つねに神経を張り詰めて長時間作業するため、注意力が散漫になって気が散ると、思わぬ事故やケガ、作業ミスにつながる恐れがあります。
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《視力に不安がある》
溶接工はレーザーやバーナー、火花などの強い光を凝視しながら、1日中細かい作業を行います。意外に目を駆使する場面が多いため、視力に不安がある人にはキツいかもしれません。
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6.未経験から溶接工を目指す方法
溶接工として就職するためには、必ずしも実務経験が必要なわけではありません。ここでは、未経験から溶接工を目指す方法についてご紹介します。
学校で専門知識を身に付ける
溶接工を目指す上では、まず溶接の知識と技術を習得することが近道となります。多くの場合、溶接コースがある工業高校や専門学校などで基礎から学び、溶接に必要な専門知識と技術を身につけるのが一般的です。また、社会人になってから溶接工を目指す場合は、職業訓練校の「溶接技術科」「溶接技術取得コース」を受講して学ぶ方法もあります。
資格を取得する
会社によっては、資格がなくても見習い溶接工として採用される場合もありますが、即戦力の溶接工として働くためには、基本的に資格が必要となります。とくに、アーク溶接・ガス溶接作業者の資格は溶接工の入門的な資格となるため、学校在籍中に取得しておけば、就職活動の際にも大きなアドバンテージとなるでしょう。
OJTのある会社の求人に応募する
知識も経験もないまったくゼロの状態で会社に入社し、働きながら必要なスキルを習得して溶接工を目指す方法もあります。ただし、この場合は「OJT(職場内訓練・現任訓練)」の枠で人材を募集している会社に限られます。OJTで採用された場合、まずは溶接の助手として働きながら現場で教育を受け、数年の経験を積んだ後に溶接工として仕事を任されるようになります。
OJTは求人数が少なく、一人前になるまで時間もかかるのがデメリットですが、学費をかけずに(働いて給料をもらいながら)スキルを身につけられるので、経済的な負担は軽くなるでしょう。
7.まとめ
ここ近年、自動溶接やロボット溶接などを導入する現場も増えていますが、機械で対応できる作業はまだまだ限られています。そうした中、日本の基幹産業を支える溶接工は、幅広い分野の製造現場で求められるモノづくりのスペシャリストとして、今後も活躍が期待されている職業といえるでしょう。
また、熟練度が重要視される溶接工の仕事は、長く続けながらキャリアアップが目指せるのも大きな魅力です。経験やスキルを積んでいくことで仕事の幅が広がり、現場では監督といった立場で仕事に従事することも可能です。
未経験から溶接工を目指している方はもちろん、モノづくりの技術職に興味のある方も、ぜひ本記事でご紹介したポイント参考に、溶接工のキャリアプランを描いてみてはいかがでしょうか。
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