「玉掛け」とは何?具体的な仕事内容や資格について徹底解説
2023/4/14 更新
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■目次
- ●「玉掛け」とは?
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・玉掛け業務には資格が必要
・玉掛けの作業が必要な場所は
・玉掛けの主な方法と使用する用具
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●玉掛けの具体的な仕事内容について
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1.吊り荷にワイヤーロープを掛ける
2.クレーンを呼ぶ
3.フックに荷物を吊り下げて安全を確認する
4.クレーンを持ち上げる合図をする
5.介錯ロープで誘導する
6.吊り荷を下ろす・荷解きする -
●玉掛けの作業に必要な資格・取得方法について
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・1トン未満の玉掛けは「玉掛け特別教育」
・玉掛け特別教育を取得するには
・1トン以上の玉掛けは「玉掛け技能講習」
・玉掛け技能講習を取得するには
・玉掛け特別教育・技能講習の難易度は
・玉掛け特別教育・技能講習を取得するメリット
- ●玉掛け作業者の就職先や年収、キャリアアップは?
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・玉掛け作業者の主な就職・転職先
・玉掛け作業者の平均年収
・玉掛け作業者のキャリアアップ
・玉掛け作業者に向いている人は?
- ●まとめ
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・玉掛けのお仕事情報はこちらから
「玉掛け」とは?
「玉掛け(たまかけ)」とは、クレーンを使用して作業を行う際に、クレーンのフックに吊り荷を掛けたり・外したりする作業のことです。
玉掛け業務には資格が必要
一見、誰でもできる簡単な作業のように思うかもしれませんが、クレーンで重量物や大きな荷物を吊り上げる際には、適切な方法で作業を行わないと重大な事故につながる可能性があります。もし作業中に吊り荷が崩れて飛散したり、フックから外れて落下したりすれば、現場の作業員だけでなく、通行人まで巻き込む大惨事にもつながりかねません。
こうした点から、大型クレーンの玉掛け作業に携わる者は、労働安全衛生法に基づく国家資格を取得することが義務づけられています。
玉掛けの作業が必要な場所は
クレーンを使う現場では、吊り荷の掛け外しを行う玉掛けの作業が必ずあります。具体的には、クレーンで重い資材や荷物を上げ下ろしする工場や倉庫、工事現場など、製造・物流・建設業の現場が中心となります。
いずれも危険を伴う業務のため、玉掛けの作業を行う際には、クレーン運転手や他の作業員と連携しながら、チームワークで現場の安全を確保することが求められます。
玉掛けの主な方法と使用する用具
玉掛けの用具・方法にはさまざまな種類があり、吊り上げる荷物の重量・形・大きさや、現場の状況などに応じて使い分けます。
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《使用する用具》
玉掛けでは、金属製のワイヤーロープやベルト状のスリングのほか、専用の用具を使って荷物を吊り上げることもあります。とくに多く使われるのが、縦吊り・横吊り用クランプ(固定金具)、ハッカー(爪金具)、ビーム(天秤状の吊り装置)などの用具です。どれを使用するかは、荷物の重さや大きさ、形状などから判断します。
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《フックに掛ける方法》
クレーンのフックに吊り荷を縛ったワイヤーロープを掛ける方法で、「目掛け」「半掛け」「あだ巻き掛け」「肩掛け」などがあります。
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《吊り荷に掛ける方法》
クレーンのフックに結びつけたワイヤーロープを吊り荷に掛ける方法で、「目掛け」「半掛け」「目通し」「あだ巻き掛け」「あや掛け」などがあります。
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玉掛けの具体的な仕事内容について
玉掛けの仕事は、以下1~6の一連作業を、手順に沿って進めることが基本となります。安全確保のために、一つひとつの手順をしっかりと理解し、慎重かつ確実に作業を行うことが重要です。
以下、各作業の詳細や注意点などを説明します。
1・吊り荷にワイヤーロープを掛ける
吊り荷にワイヤーロープを掛けます。途中で荷物が落下したり、ロープが切れて飛散したりしないよう、吊り荷の重心・荷重を計算して、適切な掛け方や使用する用具を決めます。また、玉掛けの方法や現場の状況によっては、1と2の手順が逆になる場合もあります。
2・クレーンを呼ぶ
作業する場所にクレーンを呼び、クレーンのフックが吊り荷の重心の真上に来るように誘導します。誘導する際には、大きな動作やホイッスルでクレーン運転手に指示をはっきりと伝え、近くに人はいないか、障害物はないかなど、周囲の状況にも目を配ることが重要です。
3・フックに荷物を吊り下げて安全を確認する
フックから外れないように荷物を吊り下げて固定し、ワイヤーロープにねじれ・緩み・損傷がないかを確認します。
4・クレーンを持ち上げる合図をする
安全を確認したら、運転手に合図をしてクレーンをゆっくりと持ち上げてもらいます。地切りした段階(荷物が地面を離れた所)でクレーンを一旦止め、フックにかかった状態や傾き、バランスなどを確認し、問題がなければ巻き上げの合図を出します。
5・介錯ロープで誘導する
吊り荷の巻き上げや横移動を行う際には、障害物との接触を防ぐために、吊り荷を引き寄せる介錯ロープで誘導します。
6・吊り荷を下ろす・荷解きする
巻き下げの合図で吊り荷を下ろし、フックから荷物を外して荷解きします。
玉掛けの作業に必要な資格・
取得方法について
玉掛けの資格には、「使用するクレーンの制限荷重が1トン未満」と「クレーンの制限荷重が1トン以上」の2種類があります。いずれも18歳以上であれば、職歴や学歴を問わず誰でも受講・取得することが可能です。
以下、各資格の詳細と取得方法について説明します。
1トン未満の玉掛けは「玉掛け特別教育」
吊り上げ荷重1トン未満のクレーンを使用した玉掛け作業の場合、必ずしも資格が必要となるわけではありませんが、労働安全規則に基づく「玉掛け特別教育」の受講が推奨されています。現場によっては特別教育を受けていないと、1トン未満の玉掛けであっても従事できないことがあります。
玉掛け特別教育を取得するには
玉掛け特別教育は、全国各地のクレーン教習所や企業事業所などで実施しています。講習時間は学科が5時間・実技が4時間(計2日間)で、すべてを受講すれば修了試験なしで取得できます。講習費用は1万円台が目安です。
1トン以上の玉掛けは「玉掛け技能講習」
荷物の重さにかかわらず、吊り上げ荷重1トン以上の大型クレーンを使って玉掛け作業を行う場合、労働安全衛生法に基づく「玉掛け技能講習」を取得(受講)しなければならないと定められています。
玉掛け技能講習を取得するには
玉掛け技能講習は、全国各地のクレーン教習所や都道府県労働基準協会連合会などで実施しています。講習時間は学科が11時間・実技が7時間(計3日間)で、受講後の修了試験に合格すると取得できます。講習費用は2万円台が目安です。
また、各教習所が実施している玉掛け技能講習は、4~5種類のコースに分かれていることが多く、所有資格や実務経験の程度に応じて講習時間が短縮されます。
玉掛け特別教育・技能講習の難易度は
玉掛け特別教育は受講すれば修了試験なしで取得できますので、現場で安全・確実に作業ができるよう、講習をしっかりと受けることが重要です。
一方、玉掛け技能講習は、受講後に筆記試験・実技試験ともに合格する必要があります。合格率は90%以上となっており、難易度としては比較的容易に取得できるレベルです。
玉掛け特別教育・技能講習を取得するメリット
玉掛け作業者は、クレーンを使う現場なら確実に求められるため、取得しておくと転職・就職の際にも有利となります。また、玉掛け特別教育・玉掛け技能講習は、国が認定する独占資格(有資格者だけが、独占的にその仕事に従事できる国家資格)に位置づけられていますので、資格としての優位性という点でも取得する価値はあるでしょう。
玉掛け作業者の就職先や年収、
キャリアアップは?
玉掛け作業者の主な就職・転職先
玉掛け作業者は、製造業(工場など)、建設業(土木・建築現場など)、物流業(配送センター・倉庫など)を中心に、さまざまな業種の現場で活躍しています。クレーン業務のある現場であれば、どの業種でも玉掛けに求められるスキルは共通していますので、会社の待遇や職場環境などの条件を比較して就職・転職先を選ぶといいでしょう。
玉掛け作業者の平均年収
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、玉掛け作業者の平均給与(月間)は約30万8000円、賞与などの特別給(年間)は約67万5000円で、平均年収を算出すると約437万円となります。
また、国税庁の「民間給与実態統計調査結果について」によると、国内労働者全体の平均年収は約433万円となっており、これと比較すると玉掛け作業者の平均年収は、ほぼ平均同等といえるでしょう。
※参考資料/厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和元年度)」
賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DB第1表 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
※参考資料/国税庁「令和2年分の民間給与実態統計調査結果について」
01.pdf (nta.go.jp)
玉掛け作業者のキャリアアップ
玉掛け業務は資格を要する専門職となるため、勤続年数・経験を積むほど年収が高くなる傾向にあります。クレーン作業の現場に欠かせない存在として、自身のスキルを磨きながら、やりがいを持って長く続けられる仕事といえるでしょう。
また、クレーン作業の現場では、玉掛け作業者とクレーン運転者との連携が重要となるため、玉掛け作業者はクレーンの種類や特徴、安全装置などについて理解することも重要となります。よって、玉掛けとともにクレーン運転の資格も取得しておくと、クレーン業務のスペシャリストとして、さらなるキャリアアップ&収入アップも目指せるでしょう。
玉掛け作業者に向いている人は?
玉掛け作業者には、クレーン運転者や他の作業員と連携を図るコミュニケーション力、周囲の状況に目を配る注意力・危険察知力・慎重さなど、技術面以外の能力も求められます。従って、つねに周囲の安全確認を徹底し、現場の状況を見ながらチームワークで作業を進められる人が向いているでしょう。
まとめ
現場の安全を確保しながら作業にあたる玉掛けは、クレーン業務に欠かすことのできない重要な仕事です。資格を持っていれば、さまざまな業種の現場で活躍できますので、興味のある方は資格取得を目指してみてはいかがでしょう。
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