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塗装工場あれこれ。製品を芸術的に仕上げる最新の塗装技術

塗装工場あれこれ。製品を芸術的に仕上げる最新の塗装技術

2024/1/29 更新

  1. ■目次
    ●塗装あれこれ。部位別リフォームで「塗装」がダントツ1位に
    ●最新の塗装工場がすごい!〈トヨタ自動車〉
    ●塗装工場でデータ化されるプロの妙技
    ●塗装工場で実施される、基本的な5つの工程
    ・電着塗装
    ・塗布物の洗浄
    ・シーリング
    ・塗装
    ・検査
    ●塗装工場や塗装現場で、初心者はどのような仕事に就く?
    ●塗装工場や塗装現場での仕事の魅力
    ●塗装工場や塗装現場での仕事の大変さ
    ●塗装工場や塗装現場での働く人の適性

塗装あれこれ。部位別リフォームで「塗装」がダントツ1位に

まずは意外なデータからご紹介しましょう。コロナ禍によってステイホームやテレワークで在宅時間が多くなった2020年〜2021年に生活環境を整えたいと考える人が増えたことで、リフォーム市場が大きく躍進したのですが、市場規模の内訳を見たところニーズが圧倒的に高かった部位が「塗装」であると判明したのです。

「塗装リフォーム」の受注競争の過熱によって、ここ数年は優れた塗装工にこなしきれないほどの仕事が舞い込んでいるほか、さまざまな業態の企業が塗装業へ参入したことで塗装工(塗装スタッフ)の求人が急増することに……。しかし、生産現場や建築現場で塗装工へのニーズが高まっているにもかかわらず、その数は圧倒的に少ない状態にあると言われています。

部位別リフォーム市場規模

最新の塗装工場がすごい!〈トヨタ自動車〉

塗装工場と聞いて、多く人が自動車工場を思い浮かべると思われますが、ここでは「バーチャル工場見学」と題し、自動車が完成するまでの工程をネット上に公開しているトヨタ自動車(以下トヨタ)を例に取り上げます。

参照 トヨタ自動車 「バーチャル工場見学」

「バーチャル工場見学」では、プレス→溶接→塗装→組立→検査・出荷の工程別の作業内容がドラマチックな映像によって紹介されていますが、塗装工程は7段階に分けられ、徹底した品質管理が行われていることがわかります。また、ロボットと人が協働しながら誤差なくペインティング作業が進められていく様子からは、世界に誇るトヨタのものづくりの真髄に触れることもできます。

  1. 塗装工程① 〈車体を洗浄する〉……美しい塗装は、まず洗浄から

    表面に小さなゴミや油膜があるだけで、塗装の品質に大きく影響します。洗浄して汚れを完全に除去します。

  1. 塗装工程② 〈下塗りをする〉……塗料のプールでサビ止めコーティング

    電気を利用した「電着塗装」で、サビ止め塗料を車体に塗りつけます。

  1. 塗装工程③ 〈シーラーを塗る〉……鋼板の合わせ目にシーラーを塗布

    防水・防錆・防音のためにシーラーを塗布します。タイヤハウス内の見栄えを良くするためにも使われます。

  1. 塗装工程④ 〈中塗りをする〉……ボディカラーの発色を決める「中塗り」

    クルマの色に応じて、ホワイト・グレー・ダークグレーを使い分けて「中塗り」します。この中塗りが、美しいカラーを実現します。

  1. 塗装工程⑤ 〈上塗りをする〉……一台ずつ色を切り換えて塗装

    お客様の注文順に合わせて、一台一台異なる色で塗装します。最後にツヤを出すクリア塗料を吹き付けます。

  1. 塗装工程⑥ 〈焼き付ける〉……焼き付けで、塗料を硬く美しく

    150℃で20分加熱し、表面を乾燥させて硬くします。

  1. 塗装工程⑦ 〈検査する〉……塗装不良を、決して見逃さない

    検査員が照明の反射を見て、あるいは手で触れて、塗装面を厳しくチェックします。

最新の塗装工場がすごい!〈トヨタ自動車〉

トヨタ自動車だけでなくホンダでも電着塗装→シーラー塗布→中塗り塗装→ベース塗装→クリア塗装→塗装検査の6段階に分け、ロボットと人が協働しながら、流線型や複雑な形状の部品にペインティングが施されていきます。

塗布量や塗布のスピードなどの数値をプログラミング化された塗装ロボットは、誤差なくスピーディに細部まで塗装を行いますが、自動車工場のほかに製品を大量生産するメーカーでも専門塗装工場を擁していることが多く、それらの現場では塗装のプロの妙技や経験値がデータ化され、ロボットが稼働していることが一般的です。

塗装工場でデータ化されるプロの妙技

塗装工場でデータ化されるプロの妙技

プロの塗装工は、デコボコした素材や金属・木材・サイディングなどによってローラー、刷毛などを巧みに使い分けますが、素人が使うと上下にスクロールする動きになりがちなローラーも、プロはローラを縦横斜め、十字ラインを描くようにスピーディに動かし、ときにはローラーの縁を使いながら塗り残し、塗りムラ、ダマなく手早く仕上げていきます。

こうした「これぞ職人技!」と言われる熟練塗装工の妙技も近年はすべてデータ化され、ロボット化する動きが加速していますが、リフォームやロボットが稼働できない現場では、熟練の塗装工不足が顕在化し、建設・建築・リフォーム業界では優れた塗装工の争奪戦が繰り広げられているのです。

塗装工場で実施される、基本的な5つの工程

塗装の範囲は広範で、小さな部品から大型橋梁といった建造物にも塗装が施されますが、小型マイクチップ、電化製品、住宅、自動車、大型建造物は、室内に置くものか、雨風にさらされるか等の条件によって使用する溶剤や手順はさまざまです。ここでは身近な自動車工場を例にとり、塗装の工程別の目的を整理しましょう。

電着塗装

最初に、塗布物を水溶性塗料のプールやタンクに浸し、水溶性塗料内に陽極または陰極の電流を流し、塗膜を塗布物に密着させます。このことによりサビ防止、耐久性向上、塗装を付着させやすくするなどの効果が得られます。また、均一の塗膜を隙間なく塗装できる利点から、自動車や家電など同型製品を大量生産する工場のほとんどでこの工程は自動化されています。ただし、プラスチックや木材など通電しない材料に電着塗装を行うことはできません。

塗布物の洗浄

大型の塗装工場では、電着塗装の次に塗布物の洗浄を行います。自動車のボディなどの大型塗布物では本格的な塗装の下準備として、目視では確認しづらい凹凸を専用やすりで削って滑らかにします。仕上げとして、凹凸を削った際のカスや塗布物表面に付着した微細なホコリを、専用エアーや高水圧シャワーで除去します。基本的に大手メーカーでは塗布物洗浄はロボットが行います。

塗装工場で実施される、基本的な5つの工程

シーリング

鋼板、アルミ、カーボンなどの素材を複数枚溶接している自動車は、構造体のすき間や合わせ目に目地ができます。この部分を埋めるように塗装するのがシーリング材です。シーリングには〈見た目がよくなる〉〈水分やホコリがたまりづらくなる〉〈サビ防止〉〈遮音〉などの効果がありますが、シーリングをイメージしやすい事例に、一般家庭の壁、床、浴槽のつなぎ目にゴム状の目地やパッキンなどがありますが、これもシーリング(コーキング)のひとつです。また、似た用語に「コーキング」がありますが、自動車業界などではシーリング、建築業界などではコーキングが主に用いられています。

塗装

下準備を終えたらいよいよ塗装です。この工程は多くの場合「下地塗装」「色付け塗装」「光沢出し」の3段階に分けて行われますが、自動車工場では基本的にロボットが稼働し、ロボットでは対応できない個所や、繊細な作業が求められる部分は専用スプレーなどを使って人が塗布します。

検査

塗装を終えたら次は検査です。この工程は人の手のひらや指先でしか感じられない凹凸や塗りムラ、塗装の仕上がり状態(品質)などを細部にわたってチェックします。自動車メーカーでは製品の品質を左右する重要な工程であることから経験者や資格者がこの工程に従事しています。

塗装工場や塗装現場で、初心者はどのような仕事に就く?

塗装工場や塗装現場で、初心者はどのような仕事に就く?

大型の塗装工場では、未経験者や経験の浅い塗装スタッフは次のような補助作業に従事することからスタートします。

  1. ■塗装しない部分をシートなどで覆うマスキング作業
    ■溶剤の調合
    ■工具や溶剤の管理、発注

機械やロボットに代替できない部分はやはり人の手に頼るしかありませんが、マスキングや溶剤の調合も初心者が容易にできる仕事ではなく、経験値や緻密さが求められます。そのため、初心者は補助的な業務を担当しながら、プロの塗装工としてのスキルや技術を身につけていきます。

塗装工場や塗装現場での仕事の魅力

塗装工場や塗装現場での仕事の魅力

  1. 【塗装工場の仕事の「魅力」】

    ■特殊作業などの手当支給がある場合が多い
    ■景気に左右されず、安定収入を得られる
    ■黙々と作業に集中できる
    ■人間関係の煩わしさが少ない
    ■ものづくりのだいご味を味わえる
    ■プロとしての誇りをもって仕事に臨める
    ■男女関係なく活躍できる

塗装の仕事は微妙な誤差を目や手で見分ける人の経験や感覚がクオリティに直結するため、今後、ロボットやAIなどが活躍するようになっても、塗装工の仕事はなくならないといってよいでしょう。

現在、塗装職人として活躍する人の多くが、塗装工場や塗装専門業者で経験を積んでから独り立ちするケースが多く、大手の顧客をもつ塗装工の親方ともなれば、景気に左右されることなく比較的安定した収入を得ることができます。

塗装工場や塗装現場での仕事の大変さ

  1. 【塗装工場の仕事の大変さ】

    ■繊細さと丁寧さが求められる
    ■作業着、手などに溶剤が付着する
    ■高所、閉所、足場の悪い場所で作業することも多い
    ■製品のクオリティに直結するため責任が重い
    ■専用スーツやマスクを装着することも
    ■深夜、早朝などに作業することも多い

塗装作業時に用いる溶剤は人体に有害なことが多いため、そうした溶剤を用いる工場や現場では有機溶剤作業主任者の資格を有した人が作業方法を決める責任者となり、作業を指揮する必要があります。また、有機溶剤を使用する大型塗装工場では専用防護服、手袋、防毒マスクを装着して作業にあたることもあります。

また、塗装を専業とするプロの塗装工が戸建てや店舗などの建物や内装を塗装する場合、手足がかじかむ真冬の早朝や、街の明かりが消えた深夜に駆り出されることも珍しいことではなく、引き渡し間近の最終段階で時間と闘う状況であっても、過酷な環境であっても、手を休ませることなく黙々と作業に集中し、高いクオリティで塗装を行うことが求められます。

塗装工場や塗装現場での働く人の適性

塗装工場や塗装現場での働く人の適性

  1. ◯ 塗料・溶剤の臭いに耐えられる
    ✕ 臭いに敏感な人はNG

    ◯ 高所、閉所、足場の悪い場所での作業に耐えられる
    ✕ 作業環境が悪い場所で作業ができない人はNG

    ◯ 性格的に丁寧で、コツコツ集中して仕事ができる
    ✕ 大雑把、飽きやすい人はNG

    ◯ ものづくりが好きで、いいものをつくりたいという意欲がある
    ✕ 適当、いい加減、約束を守れない人はNG

——塗装の仕事に携わる人は、建築物、家電、自動車などの製品の美しさを創造する“裏方的存在”ですが、建物であれば外壁塗装の目安が約10年と言われていますし、リフォーム市場が活況を呈するなかで塗装のニーズが急拡大している点から、景気に左右されず安定的に収入を得られる魅力があります。
何より、技術と腕前を武器にする塗装工は、今後は男女ともに人気のある職種になる可能性が高く、そのクリエイティブ性からも、頬や手に付着したペンキは塗装工の勲章といえるかもしれませんね。