50代で転職できるのか?50代の転職が難しい理由と注意点を解説
2023/4/18 更新
-
■目次
- ●50代のリアルな転職事情
-
・50代の転職者数・転職者比率の実態
・50代の主な転職理由
・50代の転職活動期間の目安
-
●50代の転職が厳しいとされる主な理由
-
・定年が近い
・人件費が高い
・プライドが高い
・身体面に不安がある -
●企業が50代の転職者に求めることとは?
-
・離職率の低さ
・即戦力となる経験と豊富な人脈
・マネジメント能力や専門性
- ●転職活動で失敗しないために注意したいこと
-
・こだわりを持ちすぎない
・視野を狭めない
・自分の市場価値を理解する
・正社員以外の選択肢も検討する
・年収ダウンを恐れすぎない
・中小企業やベンチャー企業も視野に入れる
・スカウト型の転職エージェントを活用する
- ●50代の人が転職に成功している職種は?
- ●現在の仕事を続けることも検討する
- ●まとめ
50代のリアルな転職事情
まず、転職に関するさまざまなデータをもとに、50代の転職事情のポイントを見ていきましょう。
50代の転職者数・転職者比率の実態
総務省統計局の労働力調査によると、50代の転職者数は、近年増加傾向にあることがわかります(2021年はコロナ禍の影響による一時的な減少と考えられます)。
-
-
《45歳~54歳の転職者数》
●2017年/50万人 ●2018年/55万人 ●2019年/57万人 ●2020年/59万人 ●2021年/52万人《55歳~64歳の転職者数》
●2017年/42万人 ●2018年/49万人 ●2019年/51万人 ●2020年/47万人 ●2021年/42万人
-
一方で、総務省統計局の同調査で50代の転職者比率(全就業者に占める転職者の割合)を見ると、他の年齢層と比べて低い傾向にあることがわかります。
-
-
●15~24歳の転職者比率……9.8%
●25~34歳の転職者比率……6.0%
●35~44歳の転職者比率……4.2%
●45~54歳の転職者比率……3.2%
●55~64歳の転職者比率……3.6%
-
上記のデータを分析すると、50代の転職事情は以下のような状況にあるといえるでしょう。
-
-
●近年は定年延長や雇用の流動化が進み、50代の転職に対する抵抗感が薄まってきている。
●少子化の影響で人手不足が深刻化する中、転職市場でも即戦力となるミドル世代への期待が高まりつつある。
●とはいえ、50代の人材を受け入れる企業や求人はまだまだ少なく、30代前半までの若年層と比べると転職の成功率は2分の1~3分の1と低い水準にある。
-
※参考資料/総務省統計局 労働力調査(令和3年)
50代の主な転職理由
厚生労働省の雇用動向調査によると、50代男性(50~54歳)の転職理由(前職を辞めた個人的理由)のトップ6は以下の通りとなっています(カッコ内は同年代の女性の順位)。
1位/職場の人間関係が好ましくなかった(1位)
2位/仕事の内容に興味が持てなかった(6位)
3位/会社の将来が不安だった(5位)
4位/能力・個性・資格を生かせなかった(2位)
5位/給料等収入が少なかった(4位)
6位/労働時間、休日等の労働条件が悪かった(3位)
※その他の個人的理由、その他の理由は除く
男女で順位に若干の違いはあるものの、50代で転職した人の多くが、前職で職場の人間関係にストレスを感じていたことがうかがえます。これまで我慢してきた人間関係に見切りをつけ、新たな環境で心機一転して働きながら、円満に退職を迎えたいと考える人が多いようです。
また、50代は親の介護問題が出てくる年代でもあります。ライフステージに沿った会社のサポート体制や労働環境の整備が不十分なために、仕事と介護の両立が難しくなり、転職せざるを得ないケースも少なくないようです。
※参考資料/厚生労働省 雇用動向調査(令和3年)
50代の転職活動期間の目安
年齢に関わらず、転職活動には3~6ヵ月程度かかるのが一般的です。50代の転職活動期間も6ヵ月程度が最も多く、次いで3ヵ月程度となっています。
ただし、50代の転職は若年層と比べて内定を得にくい可能性もあるため、転職活動は長期化することを考慮して計画を立てる必要があるでしょう。場合によっては、転職活動に半年以上かかることもありますので、前向きな姿勢で粘り強く取り組むことが肝要です。
また、仕事を辞めてから転職先を探すと、精神的にも金銭的にも余裕がなくなりますので、転職活動は在職中に行うことをおすすめします。
50代の転職が厳しいとされる主な理由
次に、50代からの転職が厳しくなる主な理由について、人材を雇用する企業側の視点から見ていきましょう。
定年が近い
50代の人材を雇用しても、数年~10数年で定年退職してしまうため、長期的な戦力として期待できないというデメリットがあります。
人件費が高い
社会経験やキャリアを積んできた50代の人材は、前職で高額な給与を得ていたケースも多いため、30代までの若年層を雇用するより人件費などのコストが高くなる傾向にあります。人材を採用する企業としては、「高額の人件費をかけて雇用するメリットがあるのか」を見極めるため、どうしても50代の転職者を選考する目はシビアになるのです。
プライドが高い
年齢とともにキャリアアップしてきた50代の人材は、過去の成功や仕事の進め方などにこだわりがあり、「プライドが高く扱いにくいのでは」「上司や会社の指示に従わないのでは」……と懸念する採用担当者も多いようです。配属先の上司が年下であるケースも考えられるため、現場での扱いが難しい50代のベテランの採用を控える傾向があるようです。
身体面に不安がある
50歳を超えると体力はもちろん、視力や筋力なども低下し、健康にも支障が生じやすくなります。身体機能の低下で業務が滞ったり、体調不良で欠勤・退職といった事態は会社としても避けたいので、身体面でリスクの高い中高年は敬遠されがちなのです。
企業が50代の転職者に求めることとは?
一方で、企業側は採用に当たって50代の転職者に何を求めているのでしょうか。企業が50代の人材を採用するメリットや、期待を寄せる点について見ていきましょう。
離職率の低さ
入社しても2~3年で辞めてしまう若年層が多いのに対し、50代の転職者は「この転職を最後にしたい」と考える人が多く、転職にかける意欲の高さや離職のリスクが少ない点を魅力と考える企業も多いようです。
即戦力となる経験と豊富な人脈
若年層の育成にはある程度の時間やコストがかかりますが、これまで培ってきた豊富な経験と人脈を持つ50代の人材は、そのまま即戦力として迎えることができるため、企業にとっても大きなメリットとなります。
マネジメント能力や専門性
役職やリーダーの経験がある場合は、マネジメント管理の能力やプロジェクト業務の実績などが評価され、採用につながる可能性があります。また、専門職の転職希望者に対しては、培ってきた専門スキルに期待し、即戦力として採用するという企業も少なくありません。
転職活動で失敗しないために注意したいこと
では、ハードルの高い50代の転職を成功に導くためには、転職活動でどのようなポイントを押さえる必要があるのでしょうか。ここからは50代の転職で失敗しないための注意点や対策、心構えについて解説します。
こだわりを持ちすぎない
「年齢相応の給与・ポジションはもらって当然」「パートタイムや派遣社員として働くのは論外」……など、これまでの仕事や経歴、雇用形態などに強いこだわりを持っている人は、選考でも外されやすい傾向にあります。難易度の高い50代の転職を成功させたいなら、まずは転職に対する考え方を根本から見直し、収入やポジションが下がることを恐れずに取り組む覚悟が必要です。
視野を狭めない
同じく、仕事内容や働き方などにこだわりを持っていると、転職に対する視野や選択肢が狭くなり、いつまでも転職先が見つからない可能性が高くなります。自身の可能性や転職のチャンスを広げるためにも、幅広い視点と柔軟性を持って転職活動に取り組むことが重要です。
自分の市場価値を理解する
年代を問わず、転職を成功させるためには、転職市場における自身の価値を知る必要があります。まずは、過去の職歴・実績・評価とともに、自分の強み・弱みなどを書き出し、客観的な視点で洗い出してみましょう。こうして、これまでのキャリアを自己分析することで、一個人としての自身の能力が把握でき、転職市場で狙うべき業界や職種が見えてきます。
正社員以外の選択肢も検討する
正社員の中途採用は求人数が少ないうえ、50代になると正社員として採用される可能性も低くなるのが現実です。一方で、非正規雇用の採用率は年代による差が少なく、求人数も比較的多くなっています。そのため、派遣・契約社員など正社員以外の選択肢も検討することで、短期間でも採用に結びつく可能性が高くなります。
年収ダウンを恐れすぎない
先述したように、年収にこだわりすぎると選択肢が狭くなり、転職活動が長期化する可能性も高くなってしまいます。まずは、生計を共にする家族ともしっかり話し合い、どれくらいの年収なら譲歩できるのか、納得できる金額を具体的に決めておくことをおすすめします。
中小企業やベンチャー企業も視野に入れる
求人市場で注目度の高い大手企業に対して、中小企業やベンチャー企業は求人情報が求職者の目に留まりにくく、大手より競争率が低くなる可能性もあります。また、中小・ベンチャー企業は、「自分の考えが反映されやすい」「柔軟な働き方ができる」「実力次第で高収入が狙える」など、大手企業では得がたいメリットもあります。
企業が50代に求めるスキル・経験を理解する
多くの企業では「即戦力となる経験」を50代の人材に求める傾向がありますが、自分が発揮したいスキルと、企業が求めているスキルは必ずしも一致するとは限りません。まずは、自分が培ってきたスキルを洗い出し、転職を希望する企業とマッチする部分はないか探してみましょう。その上で、企業が求めるスキルを有していると判断できれば、積極的にアピールすることが大切です。
スカウト型の転職エージェントを活用する
1人で転職活動を進めるのが不安な人は、転職エージェントに登録するという方法もあります。とくに、スカウトサービスのある転職エージェントなら、自分に合った幅広い職種の求人情報がスカウトで届くので、さまざまな求人をタイムリーに検討したい人や、忙しい人にもおすすめです。また、転職エージェントを活用すれば、自分自身で気づいていない強みや市場価値、マッチする業界や職種なども知ることができ、提出書類の添削や面接対策などのアドバイスも受けることができます。
50代の人が転職に成功している職種は?
50代の人か転職に成功している職種は、「前職の経験を生かした専門分野の仕事」と「前職とは関連のない未経験分野の仕事」の2つに分けられます。
まず、前職の経験を生かした専門分野の仕事には、各業界の技術職やマネジメント職、研究職、コンサルタント、資格職などがあり、専門的な知識・技術を有するスペシャリストとして採用されるケースがほとんどです。
一方で、50代の未経験者が働ける職場は少ないながらも、社会人としての常識やマナーが身についた中高年を歓迎する企業もあります。未経験の50代が転職した主な職種としては、工場の作業スタッフ、警備員、清掃スタッフ、マンション管理人、介護スタッフ、送迎ドライバーなどがあります。前職の経験は生かせなくても、若者にはない“豊富な社会経験や責任感”が求められる仕事もあるのです。
現在の仕事を続けることも検討する
転職を考える理由は人それぞれですし、転職でキャリアチェンジすることで、新たな道が拓けることもあるでしょう。とはいえ、50代の転職はかなりハードルが高いうえ、前職より収入が減ったり、生活環境が大きく変わったりと、さまざまなリスクが伴うことも覚悟しなければいけません。
そうした点を踏まえると、50代の人は転職活動を始める前に、転職という選択がマストなのかどうか、もう一度よく考えてみることが重要といえるでしょう。「働いている会社が破産寸前」「リストラが確実」という状況であれば転職はマストかもしれませんが、何となく不満があるから……という程度の理由であれば、今の仕事を続けた場合の将来を考えてみてください。会社に残って働き続ければ、「退職金が増える」「生活が安定する」「新しい仕事を覚えなくていい」など、金銭的・精神的にも大きなメリットがあるのではないでしょうか。 まずは、転職したい理由を明確にして、もし解決できる問題があれば、転職を思いとどまるという選択も検討してみましょう。
まとめ
ご紹介した通り、50代の転職は現実的に厳しい傾向にあり、転職活動の長期化や収入ダウンの可能性も高いなど、さまざまなリスクを伴うことが多いのも事実です。だからこそ、50代の転職で失敗しないためには、幅広い視野と柔軟性を持って自身の可能性と選択肢を拡げ、転職の是非を含めて検討することが重要なポイントとなってくるでしょう。
自分はなぜ転職したいのか、転職によって何を求めるのか……そこを明確にした上で、仕事に対する今後のビジョンやライフプランについてしっかり考え、自分自身で納得できるアプローチを導いてください。